yukungのブログ

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エンジニアの未来サミットで学生が得たかったもの

アルファギークが空回り - ひがやすを blog
http://d.hatena.ne.jp/higayasuo/20080915/1221440227

前回のエントリを読み直してみたのですが,ログに対する自分の感想がなんだか普段溜まってるものも力の限り投影しながら書きなぐってしまったために,大分ネガティブ&攻撃的なエントリになってしまいました.あまり建設的な内容ではないなぁと再度読んでみて思ったので,少し時間を置いた今,もう一度冷静に振り返ってみようと思います.
naoyaさんが言っていた,学生はどんな情報が欲しいのかについて,SIerに就職した自分視点で分析してみました.

前提として

学生時代から起業したり,なんらかのサービス作ったりしているマッチョな人は以下には当てはまらないと思いますし,そういう人は誰に言われなくても,実際に自分で情報は得ていると思います.ここでは,SIer中心に就職活動をした経験を持つ人間として,IT業界に興味を持っているけどイマイチイメージ湧かないよっていう学生を対象として書きます.

3K,3K,っていうけど実際のところどうなのよ?

3K については,完全に言葉のイメージが先行していて,それを鵜呑みにしちゃってる人は勿体無いなぁとは思います.3Kかどうかは主観的なことで,ある人にとっては3Kだし,ある人にとっては1K*1だし,3K?どこが?な人もいると思います.少なくとも,第2部でパネラーとして出ていた人たちに聞いてみたら,3Kだからやめといた方がいいよ,なんて言う人いないんじゃないかと思います.
僕はSIerに入って4年経ちます.今,学生に4年経ってどうですか?と言われたら,「会社は良く選んでね,仕事自体は面白いよ」と言うだろうと思います.だって正直面白いもの.でもそれは,僕の主観であって,もし誰かがしばらく同じ業務やってみたとしたら,「無理」っていう人もいると思います.やっぱり僕にとっては,コードを書くことを仕事にできることが,何よりも面白いと感じます.
父親は運輸業に従事していますが,毎日ダイヤに合わせた生活で,可能な限り正確に定められた時間で人を運ぶことが最大のミッションです.それが全てで,それ以上でもそれ以下でもありません.加えて人命がかかっていますから,社会的責任の大きさたるや僕とは比べ物になりません.
でも僕は,父親と同じ仕事をしたいかと問われれば,答えはNoです.変化がないこと(≒事故がないこと*2)が父親の仕事にとってもっとも重要なこと*3ですが,僕には,日々同じことの繰り返しこそが貴ばれる世界は耐えられそうにありません.
この業界は,絶えず変化していて,しかも激しいです.サボったら置いていかれます.でも,やればやっただけ何かしらの変化があって,結果が返ってくる.良いものも悪いものも含めて.それが僕にとってとても楽しいことなんです.

会社良く選んでね,って言われてもどう選んだらいいのよ

SIerで働いている人が実際業務で何をやっているのかといった部分については,漠然としたイメージしか持てず,自分で色々動いている積極的な学生にとっても情報として得ることが難しいと思います.もちろんOB訪問とかインターンとか手立ては色々ありますが,これもマッチョな人以外は,自分が参加してもいいものだろうかとか,参加して余りにもイメージと違うと時間もったいないし・・・とか思って二の足踏む人は結構居ると思います.
とはいえ,これから人生の大部分を占める,従事する職業を決めるに当たって,実際/現実の生の情報として何をやっているのかは学生にとってとても気になるところです.

自分が学生のときに就職活動をやっているとき,何が一番知りたかったか

  • 顧客の要望を聞いてそれを提案・具体化して実際にシステムを構築する仕事です
  • 主に上流工程を担当します,下流工程の仕事は下請けの会社を使って行い,それをマネジメントするのが仕事です
  • ...etc

そんな抽象的なことじゃなくて!

例えば…

  • 一日どんな過ごし方してるの?

よく企業のリクルートページに「先輩社員の一日」とか載ってるところありますよね.一日の時間配分,とかって円グラフ載ってたり.就職活動をしていた頃,あれって結構興味があって読んでました.勤務終了の時間とか,帰ってからどんなことをしているのか,休日は何をやっているのか,とか結構気になります.
自分がその会社に入った場合,自分の余暇に使える時間はどれくらいか,自己投資に使える時間はどれくらいか,その上で対価となる報酬はそれに見合っているのかとか,結構学生はしたたかに考えているんだと思います.それを考えるのも,自分の人生設計の一部なんです.
学生だって,仕事なんだから忙しいことがあるのはよくわかってるし,定時で帰れない日があるのだってわかってるはずなんです.ただそれが毎日続くのか,そういう時期もありますよ,ってことなのか,そこの実際のところを知りたいのではないかと思うのです.

  • 実際にどんなコードを書いているの?

学生時代から趣味でコードを書いている人なんかは,実際に社会で動いているコードはどんなコードなんだろう,どんな高度なアルゴリズムやテクニックを使っているんだろう,個人レベルじゃないんだから可読性も考慮されてるんだろうな,とかどんどん想像が膨らんでいってると思います.
実際はメンバーが入れ替わり立ち代わりで継ぎはぎだらけ,工数が無いので場当たり的なコードがあちらこちらに,DRYて何ですか?なコードが溢れかえっているわけですがwただこればっかりはオープンソースとかでないと,実際のコードを見せるのは難しいのかなぁと思います.

  • コード書くのは好き,だからコードガリガリ書きたい.でも何がやりたいのかまでは漠然としててまだわかんないよー

まさに僕がこのパターンだったんですが,このパターンの人は,SIerに行くと悶々とすることが多くなる可能性が高いと思います.というのも,残念ながら現在のSI業界の構造では,コード書ける人は「早くそんなの卒業してプロジェクト管理やってよ」と言われるからです.もちろん,運良く周りの理解が得られて,ハッピーなSIer生活が送れる人も中にはいるとは思いますが,それはマイノリティな方だと思います.
SIerではPG<SE<マネージャというカースト制度でなりたっています.コードをかけない人がプログラマ(というかコーダ,言語文法だけ知っていて,設計書の通りプログラミング言語で翻訳するだけの人)をやり,コードを書ける人が納品という建前の元でメンテナンスされないExcel設計書の作成,顧客との折衝やメンバーの進捗管理,レビュー,果てはスキル不足の要員の尻拭いなどに忙殺されます.
「プロジェクト管理」なんて言うと聞こえがいいですが,内情は要員の計画を立てて,メンバー集めの為に人の面接したり,上長に報告する為の数字合わせの資料を作ったり,といったことが主な業務*4です.そういうことが好きな人がいるのは事実ですが,コードを書く人が好きな人は往々にしてこういう類の業務は肌に合わない人が多いのではと思います.
そもそもコードを書くという行為に卒業する?という概念を突きつけられること自体,理解しがたいのですが,残念ながらSIerに所属する多くの人にはそれが常識のようです.こうなっている理由,いきさつにかんしては僕がここで説明するよりも,ひがさんのBlogなり Blog検索で"SIer"とか検索すればたくさん出てくると思います.
ちなみに金融機関向けの大型汎用機のシステム開発ではどんなことをやっているのか,ということを知りたい学生さんには,以下のエントリを.

3年泥のように働いてみました - Life goes on.

入った後の3年〜10年くらいのキャリアパス

僕もそうだったのですが,入った後の3年〜10年くらいのキャリアパスも気になっていると思います.今の学生は,最初に入った会社にずっと残ろうと思ってる人はそれほど多くないのではと思っています.
もちろん条件が良かったり,入った後で考えが変わることはあると思いますが,如何にその会社で経験を積んで,それを活かして本当に自分がしたいことへ繋げるか,そういったことを考えているので,新人から30歳までのキャリアってものすごく大切に,慎重に考えたいと思っていると思うのです.転職するにも年齢って一番武器になりますし.
努力は自分次第でどうにもなりますが,年齢は取り戻せないとっても貴重なものだと学生は考えています.だからこそ,先の「10年泥」発言は,そういう学生にとっては長すぎるのだと思うのです.ちょうどバブルの終わり頃に生を受けた今の世代は,親が苦労している姿はよく知っているし,一つの会社に寄りかかっていられるほど甘くないということも知っているので,如何に早い段階でどこに行っても通用するスキル・キャリアを得られるか、ということを重視するのだと思うのです.
終身雇用の時代では,如何に倒産しないしっかりした企業に入るか,大企業に入るか,が学生にとってその後の人生の大きな「安心」を得ることに繋がったのだと思うのですが,今の時代の学生は,如何に早い段階で「どこに行っても通用する,食いっぱぐれないスキル・キャリアを身につけるか」がその後の人生の大きな「安心」*5を得ることに繋がるんだと思います.またその中で,仕事を通じて社会に対して貢献したい,自分が生きた証を残したい,とも考えてると思います.だからこそ,経営的視点にもなるしテクノロジよりもプロダクト重視になるんだろうと.

こういったことを踏まえて,IT(SI)業界が学生に対してすべきこと,アプローチ

  • リアルな情報を伝える

まずは抽象的なことではなく,実際の仕事のアウトプットを見せること(可能な範囲で)や,こんなネガティブなことがあるんだよ,といったことも素直に伝えることからはじめた方がよいのでは.

  • 成功体験をさせる

もちろんネガティブな情報だけでは離れていってしまう一方なので,実際に学生に成功体験をしてもらう,というのも重要だと思います.
エンジニアやってて何が一番嬉しい・楽しいかといえば,月並みなことを言えば自分が作ったもので誰かが喜ぶ,ということもあるのですが,僕の場合は正直なところ自分が勉強すればするほど返ってくるし,それが仕事に活かせるということだと思っています.やればやるほど,知っていること・やれることが増えていって「俺ってスゲー」と感じられること*6だと思うのです.
第2部でプライベートと仕事をあまり分けないタイプもいる,という話がありましたが,正に僕はそのタイプで,自分の成長に繋がっている,興味を持てる,と思えたことに関しては,たとえ土日だろうが考えてしまうし,やってしまいます.
自分の好きなこと,興味あることが仕事とリンクしているところが,エンジニアやってて一番楽しいし面白いところだと思うので,そこを少しでもいいから実体験させる場を提供することが,重要なのではないかと思うのです.

具体的には?

こういったことを学生に提供するには,自分が思いつく範囲ではインターンなのかなぁ,やっぱり.長々書いた割に,結論に面白みがない.
これが残糞感か…w

*1:キツくないし帰れるけど給料安いなぁ的な意味で

*2:決して事故起こしたいと言っているわけではございませんw

*3:もちろんお客さんに感謝されたり,怒られたりすることもあるし,日々が何もかにも全く同じといっているわけではないです.

*4:所謂スーツな仕事

*5:更には可能性

*6:もちろん「俺ダメだー」も倍ぐらいありますけど