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20年先のシステムなんて実はどうでもいいことに早く気づけ

タイトルはホッテントリメーカーより.

IT戦略を議論するときには、20年先を見据えた長期的な視点を入れて考えます。つまり「20年先」に世の中がどう変わっているか、お客さまがどう変わっているかをイメージしてシステムを考えるわけです。

 “現時点”を議論の出発点にしたのでは、個人的にも組織的にも、また技術的にも現在の延長となり、自由な考えができません。“5年先”でも同じでしょう。

 しかし“20年先”とすれば、「現状では……」という拘束を受けることなく、自由に考えること・議論することができるのです。現在、私どものビジネスで主流となっている対面営業もこれから相当変わってくるでしょう。インターネットももっと高機能になるはずです。自由な発想、議論なしに未来を描くことはできないのです。

日本のSI業界から斬新な発想や独自の仕組みが出てこない理由が,こういうところにあると思うのです.

ビジネスモデルの提案をしてください

個人的な話で恐縮ですが,昔,新人研修だったか,「Felicaを使った面白いビジネスモデルを考えてください」という課題を出されたことがありました.課題を出した講師は10年目くらいのエンジニアでしたが,どちらかというと営業寄りのスタンスで,新規ビジネスを提案する立場で仕事をしている人でした.
課題を出された側は,みんな新人ということもあって目の前の課題に一生懸命取り組んだけれど,目を引くような提案が一朝一夕で出るわけもなく,どこかで聞いたことがあるような発表ばかりが続き,研修は終わりました.その時,講師はこう言っていました.
「若い年代のフレッシュな感覚で,自由に考えてください.」

今思い返せば,出てくるはずがない.だって斬新な発想の基となる素材*1が何もないんだもの.
どうもビジネス寄りの考え方をする人達って,普段からネタがないかアンテナを張りめぐらせているからなのかわからないけど,「斬新なアイデア」というのは何もないところからふとしたきっかけでポッと湧き出てくるものと思っているらしい.

発想は引き出しの中のネタの組み合わせ

先のことを考えたり,これから起こりうることを想定したりすることは重要だという点については言わずもがな,ましてや経営の視点から見れば当たり前のことだと思います.
ただ,じゃあどうするかという段階での具体的なアイデアというのは,「今ある引き出し」の中のネタの組み合わせでしかない.
どんな発明家だって,自分の経験や知識という「引き出し」の中から様々なものを組み合わせて新しい発明をするわけで,全くの無から斬新な発明が生まれるわけじゃない.*2
じゃあその「引き出し」って?SI業界に身を置く私の立場で言えば,私は技術者の矜持でもある「技術」に他ならないと思っています.そしてその「引き出し」を広げ,「引き出し」にネタを詰め込んでいく作業を続けることこそが,斬新な発想や独自の仕組みを生み出していくのだと思います.
残念ながら日本のSI業界においては,この「引き出し」を広げてネタを詰め込んでいく作業が軽視されすぎているのではないか.結果として,日本独自のプロダクトやサービスが生まれてこない要因になっているんじゃないかと思うのです.
今色々詰め込んでも,数年経ったら陳腐化するから覚えても意味がない,とか歳を取ると覚えきれない,とかこの業界に居るとよく聞く話です.でもそれって,要は諦めたってことでしょ?*3と.
彼らは,id:higayasuoさんが言っていた



の予備軍だと思います.

エンジニアの未来サミットid:naoyaさんは,

「世の中を変えるようなプロダクトを作るなら,技術を知らないといけない.知らなければ発想ができない」

と言っていました.私も全くそう思います.英語学習で言ってしまえば,英単語のボキャブラリが何にもないのに長文書けって言っているようなものです.発想のしようがない.

現状認識することで,発想の限界がある?

また,あの時同じく登壇していた学生から,「知っていることで逆に発想の限界を感じるのではないか」という正に上の引用元と同じような趣旨の意見があったけど,それに対してはid:hyoshiokさんが「できるかできないかはやってみないと分からない.できないかも、という限界は自分が決めている」と言っていました.
上記の引用で言えば,「20年先」と想定することで,現状から20年先の2点を線で結んだ範囲の中で変化をイメージする,と言っています*4が,そうすることで逆に発想の限界を決めてしまっているのでは?と思ってしまいます.イメージの範囲外なんて20年先だったら平気で起こりうる.例えばインターネットに取って代わる別の概念・手段が登場してきたら?RDBに取って代わるデータストアが出てきたら?
これが50年だろうが100年だろうが一緒です.むしろ先に設定すればするほど想像の範疇を超えていく確率が高くなるわけで,予言者の才能があれば別ですが,結局先のことを想定しようとしてもとてもじゃないけど想定しきれるわけがない.*5
だったら,その時々の変化を受け入れて,細かく対応していくほかないと思うのです.世の中の環境が変わることもあるだろうし,前提条件が変わることもある.でも短いスパンであれば,想定もブレが少なくて済む.
今ある「引き出し」の中で,ベストだと思われる組み合わせを見つけ出す,世に問う,フィードバックを得る.この繰り返しなんではないかと思うのです.自由な考えができないのは,ただ「引き出し」が足りないだけなんだと.

「引き出し」の中のネタは技術者の財産

だから私は,常に「引き出し」を広げ,その中にネタを詰め込み続けていきたい.それを続けることは並大抵のことじゃないのは分かっているつもり.けれど,私はそれを今のところ苦とは思っていない.むしろ楽しいとさえ思う.それはやっぱり好きだからなんだと思う.
結局,好きこそ物の上手なれとはよく言ったもので,そうじゃないと続けていくのは難しいでしょ.

*1:ここでは経験だったり,知識だったりする

*2:稀にそういう天才な人もいるかもしれませんが

*3:要は勇気が(ry

*4:ここで言っているのは,予算だったり,政治的な縛りだったりする拘束のことを言っている気もするけど

*5:推測でしかないけど引用元の担当者の方はシステム系の出身かな?ウォーターフォール的な考えが根底にある気がする